ツヴォイ式お絵描き024「ローファー」01
大学に進学するにあたり、一番欲しかったのが、ローファーでした(笑)。
高校生の頃、お洒落な友人の会話に影響されて、ファッションに興味を持ち始めました。
その元は、カッコよくなりたい、
さらにその元は、女の子にモテたい、という大元の欲求で、非常にシンプルでした(笑)。
高校の修学旅行や遠足は私服だったのですが、何を着ていけばいいのかよく分からず、
彼女ができて、デートとなればなおさらで、
にも関わらず、何を買って、何を組み合わせればいいのか?の知識は乏しく、
となれば、教科書で基本を学ぶしかなく(笑)、
プロレス雑誌を我慢して、ファッション誌へお小遣いを回し出しました(笑)。
異性にモテたいという欲求や煩悩・欲望は、嫌いだった我慢や勉強をも凌駕していくモチベーションを生み出すのだと思います(笑)。
大学で東京へ行くことになって、毎日が私服となると、その尊い欲求(笑)は日々の深刻な問題へと昇華していきます(笑)。
大学の入学式ではブレザースタイルで決まりましたが、合わせる「革靴」というのは、
私にとっては未知の領域でした。
サラリーマンのオッさんの黒い靴という認識しかなかった私にとって、
お洒落な革靴というものが分からない。
ファッション雑誌の「靴特集」を見てみると、
「とりあえず最初の一足を選ぶなら、フォーマルからカジュアルまで万能の『ローファー』があれば間違いなし」
というキャッチで、いくつかのローファーが紹介されていて、
それはとても魅力的に映った私は、どうしても欲しくなりましたが、
雑誌に紹介されているローファーは、それまで靴の最高額はスニーカーのコンバースだった私にとっては、恐ろしく高額で、
お年玉貯金の範疇ではどうにもならなく、「これが欲しい」と写真を見せて母親にねだりました。
私の両親は、そういうことに対する理解は全くなく、難色を示しながら、
一応検討するように、怪訝そうな顔をしながら雑誌をめくりました。
そして一枚の写真を見つけます。
その写真は、ブレザースタイルにコンバースのスニーカーをあえて合わせるドレスダウンの着こなし紹介の写真でした(笑)。
(うわ、嫌なページを見つけた!)
という私の予想通り(笑)。
ここぞとばかりに、
「あ、ほれ、こういう風に合わせればいいんだがね。わざわざこんな高いもん無駄遣いせんでも、あんたの持っとる靴でいいがね。」
と言い出し、交渉は決裂に至りました(笑)。
親の事情など理解していない私は、私の親は私のことを愛してくれていないと確信しました(笑)。
どうすることもできず、結果、私は、入学式は、そのページの写真の通り、
ブレザーにタータンチェックのパンツに、不服ながら、コンバースのエンジ色のスニーカーを合わせて、大学の入学式に向かいました。
周りの学生達を見渡すと、とてもお洒落に見える人達は、皆、足元にはピカピカの革靴を履いていて、
なんだかとても出遅れたような、惨めなような、悲しい気持ち(笑)になりました。
それ以来、ローファーは私の憧れでした。
アルバイトを始め、お金を貯めて、一年後には、憧れのリーガルのローファーを手に入れました。
日常では履かないことは分かっていましたが、いざとなった時の為にと、清水の舞台から飛び降りました。
いざとなった時は、なかなか訪れず、通学で履くにはとてももったいなくて、結局、履く機会はなかなかありませんでした。
当時、山手線に乗ると、私立学校とおぼしき小学生が、ローファーを当たり前のように履いている場面に遭遇して、ライフスタイルの違いを感じたものです(笑)。
最初に買ったローファーは、いつの頃だったか、もう手元にはありませんが、
ファッション雑誌で素敵に写るローファーを見るたびに、
当時の切ない感情を思い出します。