「バランス」は指標と実践で使い方が変わる
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経営においては「バランスが大事」というのはよく聞くし、言いたくなるんだろうけど、
その言葉を指標や教育上の大論で使う時と、
実践における具体的一手を決める時の使い分けは必要でしょう。
現状打破をしようとする前提の時において、その言葉が出る時は、何も決めていないということと同義とも言えます。
同条件下で、新たに何かを取りに行こうとすれば、何かを手放すかの意思決定は先に必要で、
すなわち、選択や順番決めというのは、
「何を手放すかを先に決める」
のと同じなわけです。
これがなかなかできません。
例えば、売上金額を優先して上げていきたい時は、傾向として粗利率は落ちます。
ところが、多くの場合は、
「売上は上げろ、粗利率は下げるな。」
となります。
そんなことは言わないという人でも、同じ時間と場では言わないだけで、ある会議では、
「売上を上げろ。」
と言って、上がったら、今度は直近の会議で
「何で粗利率が落ちてるんだ!」
となることは往々にしてあります。
実力が上がれば、それはできるはずだ、と言ったりもしますが、
そもそも、「やる気」も「能力」も今だから今なわけで、
実力がないから今の現状なのです(苦笑)。
実力を上げろと言えば、人の実力が上がるのか?というと、私にはどうしてもそうは思えません。
この場合は、
「いつまでに、売上は○○円まで上げろ。粗利率は○○%まで下げるのは認める。」
と先に数値で分かるようなフレームを決めておかないと、社員は何をどうしたらいいのか分かりません。
こんなのはまだマシな方で、
「よく考えてから動け、すぐ動け。」
「はやく帰れ、仕事量は増やせ。」
「個性を出せ、普通でいろ。」
「新しいことをやれ、今を守れ。」
「速く走れ、ゆっくり歩け。」
なんていう、何をどうしたらいいのか分からないことを、意思決定の場で真顔で言う人は案外多いのです。
それはもうバランスどころではなく、支離滅裂の領域ですが(苦笑)。
こうなると、人はどうなるかというと、どうしていいのか分からないので、止まります。
今までと何も行動を変えようとしません。
新たには動かなくなるので、それは、実質的には止まるのと同じです。
バランスは大論として必要ですが、実践で前に進みたい時は、バランスを問わない自分になることが必要で、せめて、
右足を先に出すのか、左足を先に出すのか、
は伝える必要があります。
まずは進ませないことには、実力は上がらないのです。
その意思決定ができるのは、トップだけでしょう。
トップというのは、お金の決済権を持ち、そのリスクを張れる人という意味なので、
中小零細企業においては社長ということになるでしょう。
お金の範囲が分かっている社長が意思決定するしかないのです。
経営指標の上でのバランスは、理想かもしれません。
でも、バランスすると止まります。
バランスを理想として進みたいなら、進んでいる時は、バランスを崩し続けるしかないわけで、
止まりたくないのなら、バランスは意図的に崩すことが理想なのではないでしょうか?
成長が止まることが理想だという企業を、私は今のところ見たことがないのです。